犬の聴覚
・犬は人間が聞きとれる距離の4倍離れた距離からの音を聞き分けることができます。
・このように優れたイヌの聴覚も9才をすぎる頃より衰えはじめます。
若い時にはかすかな音でも飛び起きていたワンちゃんも多少の音には気づかず熟睡するようになります。
・視覚、聴覚、臭覚のうち聴覚が最も早く衰え、次に視覚、臭覚は比較的長く残るようです。
健康な犬の耳
健康なイヌの耳の中は薄いピンク色をしています。耳道を保護するために,表面は少量のワックス状の分泌物でおおわれています。
このワックス状分泌物(皮脂腺、アポクリン腺)と古くなって剥離(はくり)した耳道の細胞がまざりあったものが耳アカ(耳垢)です。
耳道内の細胞は耳道の深部から耳孔入り口に向かっエスカレーターのように移動し自動的に耳孔内の汚れを外部に排出する機能があります(セルフクリーニングシステム)。この機能のために健康な犬では耳そうじをしなくても耳孔内を清潔に保つことができます。
犬の外耳道は垂直外耳道と水平外耳道からなっています。飼い主さんが肉眼で観察できるのは垂直外耳道です。綿棒での耳そうじは、垂直耳道の汚れを水平耳道に押し込んでしまう事がありますので注意が必要です。
水平外耳道の観察は耳鏡などの特殊な検査器具が必要です。
観察のポイント
まず、耳介部を観察します。
● 耳介部の脱毛、カサブタ、ひっかき傷、炎症性の発赤がないかどうか調べます。
次に、耳の中を観察します。
イヌの耳道の構造は複雑ですので、ペンライトがあると便利です。
● 耳孔内に汚れはないか?
● 嫌な臭いはしていないか?
● 塊状のもの(腫瘍、ポリープ)はできていないか?、などを調べます。
最後に耳道の外側に触れて痛みがないかどうかをを調べます。
このような症状がみられたら早めに診察を受けましょう!
● 耳をかゆがる。
● 頭を振る、頭を傾けている。
● 耳に触れると痛がる。
● 臭いが強い。
● 耳の中が汚れている
● 耳介部の発赤。
● 耳介部が黒く変色。
● 耳介部の皮膚が乾燥し分厚くなっている。
犬でよく見られる耳の症状
♡以下は当院で診察中によく目にする症例のほんの一部です。
耳介部の発赤
(アトピー性外耳炎)
初期のアトピー性皮膚炎でこのような症状がみられます。かゆみのためにイヌは頭をふったりひっかいたりします。
耳介部のひっ掻き傷
(アトピー性外耳炎)
アトピー性外耳炎を放置しておくと耳介部はひっかき傷ができ細菌感染をおこしてさらに症状が悪化します。
耳孔内から膿状の分泌物
(細菌性外耳炎)
耳孔内からウミ状の分泌物が出ています。アトピー性外耳炎、ホルモン異常、耳道内の腫瘍などがあると耳道内での細菌が増殖しやすくなります。この犬は緑膿菌が増殖していました。
耳分泌物の顕微鏡写真
前の写真犬の耳孔内分泌物を染色して顕微鏡で観察すると、大量の細菌と白血球がみられました。
耳介部の皮膚の肥厚
(慢性外耳炎)
アトピー性外耳炎が慢性化すると耳介部の発赤とともに耳介部や耳道が分厚くなり耳道内の通気性が悪くなり細菌感染をおこしやすくなります。
耳介部の肥厚と色素沈着
(慢性外耳炎)
病気が慢性化すると、耳介部の皮膚は分厚くなり乾燥してメラニン色素の沈着がみられます。このような状態になると保湿剤やステロイド剤での徹底した長期治療が必要になります。原因はわかりませんが、柴犬に多発するように思います。
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