猫伝染性腸炎
猫伝染性腸炎は
別名、「猫パルボウイルス感染症」または「猫汎白血球減少症」と呼ばれます。
猫伝染腸炎は感染猫の便や尿、唾液、嘔吐物に接触することで感染します、
この病気は非常に感染力が強くあらゆる年齢のネコが感染しますが、4ヶ月令以下の子ネコでは死亡率高くなります。
症 状
・この病気に感染すると、発熱、嘔吐、下痢、血便、食欲不振脱水症などの症状が発現します。
・重症例では最初の発熱から3-4日で死亡します。
治 療
ウイルスそのもに効果がある薬はありません。そのた脱水症、嘔吐、下痢などに対する治療が主体となります。
予 防
猫3種ワクチン、、猫5種混合ワクチンで予防できます
猫カリシウイルス感染症
症 状
・クシャミ、鼻水、涙目、口内炎(口の中の痛みや潰瘍)などの症状がみられます。
・通常は症状は軽度ですが重症例では、肺炎や関節痛が発生することもあります。
・海外では顔面の浮腫や出血をおこす死亡率の高い全身性強毒性カリシウイルスも報告されています。
治 療
・猫カリシウイルスそのものに有効な薬はありません。
・治療は抗生剤、点眼薬、点鼻薬などによる症状緩和処置が主体となります。
・食欲がない場合には強制給餌や輸液療法が必要になります。
予防ワクチンを受けていない同居猫がいる場合は、感染猫を隔離して消毒を徹底する必要があります。
予 防
猫カリシウイルス感染症の予防は、ワクチン接種が有効です。
猫3種ワクチン・猫5種ワクチンで予防できます。
ヘルペスウイルス感染症
猫ヘルペスウイルス感染症は
猫ヘルペスウィルスの感染によるもので、呼吸器が侵される病気です。
症 状
・結膜炎、目やに、くしゃみ、鼻汁、唾液分泌、咽頭炎、嗜眠、食欲不振、発熱、場合によっては咳などが挙げられます。
・症状は数日から数週間続く場合があり、ウイルスの排出は通常約 3 週間続きます。
・猫ヘルペス による臨床症状は、一般に 猫カリシウイルス で見られる症状よりも重篤です。
・治療開始が遅れたり免疫が低下している猫では角膜炎や慢性副鼻腔炎などを併発します。
病気の経過
・適切な治療によりほとんどの猫は2週間以内に症状が消失しますが
回復猫の約80%はウイルスが神経細胞内に住み着いており(潜伏感染、他の病気やストレスなどで動物の免疫力が低下するとウイルスが活動をはじめ、再発をくりかえします。
・特に多頭飼育の家庭ではピンポン感染がおこり感染のコントロールが非常に難しくなります。
またウイルスは感染している母猫から子猫に感染することも多く子猫全員が感染します
治 療
治療は細菌の二次感染に対する抗生剤の投与、脱水症を治療するための輸液や鼻腔カテーテルによる栄養剤の強制給餌などが治療の中心になります。食欲ががないネコちゃんは食欲が回復するまでは通院治療が必要です。食欲が回復すると自宅での治療にきりかえることができます。
予 防
猫3種ワクチン、猫5種混合ワクチンで予防できます。
猫クラミジア感染症
猫クラミジアは
クラミジア細菌が感染することによって起こります。
猫の眼の結膜に感染しやすく、1歳以下の子猫でよくみられます。
症 状
・結膜炎
・目やに
結膜炎は、「結膜」という眼球のまわりの粘膜が充血して真っ赤になり、腫れ上がる病気です。
ほとんどの場合、片目から始まって両目へと広がります。
治 療
治療はテトラサイクリン系の抗生剤の内服と点眼
予 防
この伝染病は猫5種ワクチンで予防できます。
猫白血病
猫白血病は
症 状
猫白血病ウイルス感染により免疫力が低下するため、いろんな病気にかかりやすく、また治りにくくなります。猫白血病に感染している猫ちゃんによくみられる症状としては「貧血」「下痢が続く」「口内炎が治らない(難治性口内炎)」「病気や傷が治りにくい」など様々です
経 過
感染時の年齢により経過はことなります。
猫白血病ウイルスに感染した猫が、免疫によってウイルスを排除できずに「持続感染」の状態となった場合、その多くが3年以内に免疫不全やリンパ腫などの猫白血病関連疾患を発症するといわれています。
持続感染猫の飼育管理
・室内飼育にする。
・去勢不妊手術をする。
・同居猫がいる場合は感染猫を隔離し同居猫は白血病抗原検査を実施し陰性なら予防ワクチンを注射する。
・6ケ月ごとの定期健康検査
診 断
猫白血病と猫エイズを同時に検査できるスナップ・FeLVコンボ診断検査キットで短時間に検査することができます。
治 療
ウイルスそのもに効果がある治療法はありません。
症状緩和療法やインターフェロンなど、免疫力を高めるような治療が行われます。
予 防
猫5種ワクチン接種で予防できまが予防効果は80%前後と報告されています。
猫エイズ感染症
猫エイズ(猫免疫不全症)は
猫エイズウイルス(FIV)に感染することで発症する感染症です。
猫エイズに感染している猫とケンカなどにより、感染猫の唾液や血液から感染します。
猫エイズが直接的な死因になることは少なく、多くは免疫低下により二次感染が原因で死亡します。
猫エイズが人間に感染することはありません。
症 状
・発熱
・リンパ節腫脹
・下痢
・血液検査→白血球減少
・外観上は無症状
・猫エイズ抗体検査は陽性
猫エイズ感染猫の30%はこの時期に来院
・慢性口内炎、歯肉炎
・リンパ節腫大
・慢性副鼻腔炎
・慢性皮膚炎
・慢性腎炎
・貧血
・体重減少
・免疫不全
・腫瘍の発生(悪性リンパ腫、扁平上皮癌)
FIV感染猫は腫瘍の発生率が高くなります。リンパ腫や白血病は健康猫に比べ約6倍も高くなります。
治 療
支持療法と二次感染に対する治療が主体となります。
ストレスの少ない環境での飼育管理により長期間生存させることができます。
予 防
・室内飼育にする。
・去勢不妊手術をする。
・ストレスの少ない環境での飼育
猫エイズワクチンありますが、感染阻止率は70%といわれています。接種の是非に関してはさまざまな意見があります。
当院ではこのワクチンは取り扱っていません。
猫伝染性腹膜炎
猫伝染性腹膜炎は
猫コロナウイルスの感染が原因で発症します。
猫コロナウイルスに感染しても通常は軽い腸炎を引き起こすだけです。しかし、ウイルスが体内で突然変異を起こし、病原性の強い猫伝染性腹膜炎ウイルスに変化すると、猫伝染性腹膜炎を発症します。
・ウイルスの感染は、感染猫と一緒に生活していたり、ケンカをした場合などに起こります。
・猫伝染性腹膜炎は発症すると数日から数ヶ月で亡くなってしまう致死率の高い病気です。
この病気は ウエットタイプとドライタイプの二つの型に分類されます。
症 状
ウエットタイプ
・下痢や嘔吐、貧血などとともに腹や胸に水がたまってお腹が膨れ、呼吸困難などの症状が現れます。
・このタイプは病原性が高く、症状発現後2か月以内に死亡することが多いといわれています。
ドライタイプ
・肝臓、腎臓、脳、眼などの器官に炎症が生じます。体重減少、食欲不振、発熱などの症状がおこります。
・神経系の症状(ふらつき、異常行動)や眼の病変も見られることがあります。
このタイプはウェットタイプに比べ、やや慢性的な経過をたどる傾向があります
治 療
プレドニソロンをはじめさまざまな薬が報告されていますがこれらは症状を緩和する作用はありますがウイルスそのものに対する効果はありません。
2019年にカリフォルニア大学デーヴィス校のPedersen博士らのグループによって、核酸合成を阻害する新規物質(GS-441524)がFIP罹患猫に高い治療効果を示すことが報告されています。